目次

出羽 隆洋
代表取締役
インフラエンジニアとしての経験をもとに起業
私自身、元々はSESのインフラエンジニアとして5年ほど働いていました。その中で、「現場での頑張りが正当に評価されにくい」「スキルアップが難しい」といった課題を感じていました。
25歳で起業すると漠然と決めていたこともあり、「エンジニアに寄り添い、エンジニアのことを一番に考える会社を本気で作りたい」という思いから、2004年にソシアスを立ち上げました。
創業当初は、数名のメンバーしかいない小さな会社で、私自身も現役のエンジニアとして現場に立っていましたが、社員が10名を超えたあたりからエンジニアを卒業し、営業や経営に専念するようになりました。
組織の拡大に伴う課題に直面
創業当初は、主にリファラル(紹介)採用によって社員を増やしていました。そのため50名程度の規模までは、少数精鋭で社員全体のスキルレベルが高い状態を維持できていました。
しかし、2020年頃から組織の拡大を見据えて一般採用を強化したところ、ソシアスに加わってくれる社員のスキルレベルが徐々に多様化してきました。
エンジニア未経験者やキャリア5年未満の経験が浅い層と、10〜15年のエンジニア経験を持つベテラン層が一定数在籍している一方で、その中間にあたる層の社員が少なく、スキルレベルとしてやや二極化している構成になっているのが現状です。
本来であれば、経験の浅いメンバーはソシアスの先輩や上司のいるプロジェクトに追加でアサインし、育成しながら成長させることが理想です。しかし現実には、状況によっては単独で配属せざるを得ないケースもあります。
「一人にしない」仕組みを当たり前にしたい
こうした課題を解消するため、現在の経営方針の軸に据えているのが、「社員が成長できる会社づくり」です。
この実現に向けては、教育専任のメンバーを2名体制で配置し、月に4回の対面での勉強会も継続的に開催しています。これらの体制は、同規模のSES企業ではなかなか見られないレベルの充実度だと思います。今後も教育への投資は惜しまず、さらに強化していく方針です。
最終的な目標は、「エンジニアを単独で配属させない」体制の実現です。現在は中堅層がやや少ない状況ですが、入社4〜5年目の社員がリーダーとして育ちつつあるため、今後はチーム単位での配属が当たり前になるよう、人材の採用と育成をさらに加速させていきます。
採用戦略も見直しました。年間100名規模だった採用数をあえて縮小し、未経験人材の採用ペースを緩やかにしています。
その結果、これまで営業メンバーが多くの時間と労力をかけていた「未経験エンジニアを現場に送り出すための営業活動」の負担を軽減できました。そのぶんの余力は、すでに現場で働くエンジニア一人ひとりのスキルアップを支援する取り組みに充ててもらっています。
具体的には、現在のスキルより少しだけ難易度の高いプロジェクトにチャレンジしてもらうなど、より成長につながる環境を意識して、配属先の見直しや調整をしてもらっています。

真面目にコツコツ頑張る人を正当に評価する
経営方針としてもう一つ掲げているのが「社員が正しく評価される」体制をつくることです。
創業当初は評価制度がまだ整っておらず、資格取得やリファラル(紹介)への貢献といった目に見える成果に対して、手当を支給することで評価を行っていました。
しかし、それだけでは、「現場での頑張りが評価に反映されにくい」という本質的な課題を十分に解決できていません。
そこで2025年からは、配属先のお客様にアンケートへの回答を依頼し、現場での働きぶりを客観的に把握・可視化する取り組みをスタートしました。あわせて、人事評価を専門に担当するメンバーも配置しています。まだ発展途上の段階ではありますが、今後も継続的に改善を進めていく予定です。
大切にしているのは、「自己アピールが得意な人」ではなく、「地道に真面目に努力を重ねる人」がきちんと評価される仕組みであること。それは、ソシアスの経営理念である「謙虚・誠実・前向き・勤勉」の考え方にも深く通じています。
変化への反発を受け止め、対話を重ねる
かつてのソシアスは、リファラル中心の採用に支えられていたため、よりアットホームでフラットな雰囲気が魅力の組織でした。しかし組織の拡大に伴い、持続可能なマネジメント体制の構築が必要となり、外部の支援会社からのサポートも受けながら、本格的な「組織化」に踏み出しました。
この変化に対して、社員の一部から「昔の雰囲気が良かった」といった戸惑いや反発の声があがったのも事実です。その背景には、経営側の意図や目的が十分に伝わっていなかった部分があったと認識しています。
そうしたギャップを埋めるために、経営陣自らが現場との距離を縮める取り組みとして、課長や主任など、リーダークラスのメンバーと定期的に食事の場を設けるようにしました。
この場では、課長やその配下の社員が現場で感じている課題を直接聞くようにしているほか、経営陣の考えや方針についても自分の言葉で率直に語るようにしています。部長を通じた形式的な伝達では伝わりにくい熱量や背景まで、しっかり伝えることを大切にしています。
現場の生の声や意見に触れられるのはもちろん、私自身の思いをダイレクトに伝えられることもできる、貴重な時間だと感じています。会社の方向性や社内の決定事項について、意図や経緯を含めて突っ込んだ質問が飛び交うことも多く、非常に有意義な場になっています。
社員の意見に耳を傾け、軌道修正しながら前進する
組織づくりには「正解」がないからこそ、変化に伴う社員の声に真摯に耳を傾け、必要に応じて軌道修正を図っていくことが重要だと考えています。こうした、現場の声を取り入れながら組織を変えていく柔軟な姿勢は、ソシアスの強みの一つでもあります。
社員数が増えた今、以前のように全員とフランクな関係を築くことは難しくなりましたが、それでもできる限り、そうありたいという思いは変わりません。実際に、お客様先で働いているエンジニアがオフィスに帰社したときには声をかけたり、昼食に誘ったりするようにしています。
社内でも、「役職が上の人ほど謙虚であるべき」ということを日頃から役職者に対して伝えていて、その姿勢を自ら体現することを常に意識しています。
実際、社員同士の距離の近さや、立場に関係なく率直に話し合える雰囲気は、ソシアスのカルチャーとして定着しつつあるのではないかと思います。

100年続く、家族に自慢できる会社へ
私の最終的な目標は、ソシアスを「100年続く会社」にすることです。その実現のためには、社員一人ひとりがソシアスで働くことに誇りを持ち、「家族に自慢できる」と思える会社でなければならないと考えています。
ここで言う「自慢」とは、会社の規模や知名度ではなく、仕事のやりがいや働き方、社風や制度といった「中身」で胸を張れることを意味しています。
そのためには、ごまかしのない誠実な経営と組織づくりが不可欠だと思っています。目立たなくても真面目で誠実な人が正しく評価され、活躍できる環境を実現するために、仕組みを整え、現場の声に耳を傾けながら、これからも改善を積み重ねていきます。